「おまえの物はおれの物」
『ドラえもん』に出てくるガキ大将のジャイアン。
その横暴ぶりを象徴する台詞として、このフレーズはよく知られています。
「おまえの物はおれの物、おれの物もおれの物…な‼︎」
シェアハウスの経験があるひとは少なくないでしょう。キッチンやお風呂、あるいは寝室さえ共用にして暮らす生活は、ひとりひとりの所有の負担が減って経済的です。いっぽうで、冷蔵庫で冷やしておいたプリンが食べられちゃったとか、貸してあげたハサミがべたべたになって返されるとか、「所有」と「シェア」はすぐに入り乱れ、トラブルを生むものでもあります。
不幸の大食い選手権
『日本国語大辞典』(小学館、2006)で「所有」そして「共有」を調べました。
▶︎所有
自分の物として持っていること。(p.679)
▶︎共有
ひとつの物を二人以上で所有すること。共同で持つこと。もちあい。(p.1488)
▶︎もちあい
1 双方が持つこと。互いに持ち寄ること。互いに力を合わせて維持すること。[…]
2 勢力関係が均衡を保っていること。
「シェア」という日本語は、「市場占有率」など、経済に関わる用語としては載っていますが、「共有する」という意味では載っていません。英語の辞書(Cambridge Dictionary)で英単語としてshareの定義を調べると、他人と一緒に使うという意味のほかに、分割してそれぞれの所有物にするという意味もあり、この2つの違いについて盛り上がりました。
ホールケーキを一緒につつくのか、半分に切ってお皿も分けて別々に食べるのか、けっこう違います。分割してお皿も分けられるのであれば、安心してゆっくり自分の分を食べられるし、明日のためにとっておくことにしてラップをして冷蔵庫に入れておく権利もあります。「ホールケーキ」が幸福なものの喩えなら、早食いのひとが得するよりも、分割したほうがフェアでしょう。でも、ふたりでシェアしている「ホールケーキ」が、幸福なものではなくて不幸なものの喩えだった場合、食べたくないのに食べなければいけないということになります。分割してあとは知りませんとしてしまうより、もうちょっとなら食べられるぞという人が代わりに少し多く口に入れられるなら、ふたりが協力し合って大きな一個を一緒につつくというルールにしたほうがいいかもしれません。「シェア」の方法は、状況を見ながら慎重に相談する必要がありそうです。

この場所は誰のもの
話題は、ポイ捨てや、民話にある姥捨山(うばすてやま)にまで広がりました。
▶︎姨捨山 長野地域
昔、年よりの大きらいなとの様がいて、「60さいになった年よりは山に捨(す)てること」というおふれを出しました。との様の命れいにはだれもさからえません。親も子も、その日がきたら山へ行くものとあきらめていました。
(長野県ウェブサイトより)
富士山もゴミが多く捨てられていることで知られています。山や川に「ちょっとくらいいいでしょ」「なかったことにしてちょうだい」と頼ってしまうのは、その場所が誰の所有でもないように思うからかもしれません。自分の部屋でも、他人の庭にも、決してゴミを放り投げないひとが、どうして、山登りや川辺のバーベキューでは好き勝手やってしまうのでしょうか。これは法律やマナーの話でもあるし、自然観の話でもあります。
「おまえの物はおれの物」。大きな視点で人間の過去を振り返れば、先住民から土地を奪い、追い出すまでして植民をしてきた歴史がありますし、ガザに目を向ければ、そういった収奪は遠く過ぎ去った昔の蛮行というわけでは決してありません。ジャイアンのセリフ、けっこう奥が深いです。
後半のワーク「3行書評」
話が盛り上がって少し長くなってしまいましたが、作業時間も少しだけ取りました。
取り組んだのは、面白い本を3行で紹介するというワークです。
今後、ブログにも掲載できたらと思います。
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