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執筆者の写真ラボラトリ文鳥

ドイツ・ベルリンにある、難民のための共生シェアハウス”Refugio”

更新日:2022年1月28日


皆さんこんにちは。ラボラトリ文鳥コーディネーターの飯塚です。

「町のシンクタンク ラボラトリ文鳥」は、北池袋の古民家シェアオフィスくすのき荘を拠点に活動しています。研究室に籠もりがちな院生や研究者が、週末を楽しむ子連れの夫婦や、画家の卵など、普段あまり関わることがない人々と、くすのき荘という空間を通じて生活が交差する様子は、非常に興味深いものがあります。

ラボラトリ文鳥は、昨年(2019年)の冬ごろからスタートし、コミュニティとしての在り方を試行錯誤している段階です。

今回のコラムでは、私が昨年の夏ベルリンで訪れた「難民のための共生シェアハウス”Refugio” https://refugio.berlin/」について、コミュニティ形成の視点からご紹介しつつ、ラボラトリ文鳥のコンセプトを深化してみたいと思います。

わたしがベルリンまで行った理由


わたしは、日本国内の移民の受け入れの実態に注目し、「共生」をめぐる課題について研究をしています。ドイツのベルリンまで足を運んだ理由は、移民の受け入れについての長年の支援の現場や、ヨーロッパの移民・難民受け入れの現場を実際に訪問したかったからです。

周知のとおり、欧州地域は、第二次世界大戦後から、移民を積極的に受け入れてきた長い歴史があります。昨年、私が短期留学していたドイツ・ベルリンにおいても、ヨーロッパ諸国の移民政策下で受け入れられてきた人々(主にトルコ人)は移民二世・三世としてホスト社会の構成員となっています。

近年、増え続ける移民・難民の受け入れを巡って欧州の世論は二分しており、移民排斥の論調を強める極右政党の台頭や、英国のEU離脱など、社会の分断が懸念されています。


難民が一般社会と繋がりながら暮らせるシェアハウス Refugio


Refugioは、ベルリン在住のアーティストや難民支援を行うNGO団体などによって立ち上げられたシェアハウスです。政府からの支援は一切受けておらず、難民支援をビジネスとして実現しています。シェアハウスの住民は、難民とドイツ社会に詳しいドイツ語ネイティブの人々です。ドイツ語ネイティブの人々は、入居者の3分の1以上の割合に維持し、難民がドイツ社会に馴染むための機会を設けているそうです。

Refugioの創設者は、政府が提供している共同生活施設が、極度に狭く、十分な設備が整っていないこと、そして一般社会から隔離されていることを問題視し、難民の人々が人間的な生活を送れるような場所を提供するために、Refugioを立ち上げました。

2015年から始まったこのシェアハウスは、政府からの支援を受けずに事業を拡大することに成功し、現在は誰でも立ち寄ることが出来る喫茶店の運営も同時に行なっています。勿論、喫茶店の運営にもシェアハウスの住民が関わっています。難民がドイツ社会との関わりを持ちながら自立した生活を送ることを可能にしています。


Refugioが運営する喫茶店内の様子



入居者は家賃とボランティアが義務付けられます


シェアハウスの入居者は家賃の支払い以外に、週4時間以上のボランティアワークに取り組む義務があります。義務と言っても、運営側がその内容を指定するのではなく、入居者自らが提案・企画を行なっているのがポイントでしょう。難民のためにドイツ語講座や、難民としての経験を一般市民に語るイベントの企画のほか、シェアハウスのインテリアを改善し、入居者にとって居心地の良いものにするための作業に取り組む人もいるそうです。

また、シェアハウスでは、様々な交流イベントも開催されています。難民の人が新しいビジネスを立ち上げやすいように、まずはRefugioでのイベントを通じて地域とのネットワークを構築できるようにしています。実際に、レストランの経営やIT関連のビジネスを始めた人々がいます。はじめはRefugioの設備を利用して週末限定で開業し、ビジネスプランが固まって、固定客も獲得したらRefugioの外に実店舗を持つという流れです。

社会問題に取り組む施設は、一般市民にとって近寄りがたい場所になりがちかもしれません。例えば「難民」と聞くだけで、「何だか難しそうなテーマだ」と気張って、足が遠のいてしまう方も多いかもしれません。しかし、Refugioは、シェアハウスの一階に喫茶店が設けられていることもあり、社会問題に関心がない人でも気軽に立ち寄れる空間になっていました。支援を募るようなメッセージは全面には出さず、喫茶店で働く難民やシェアハウスの住民との交流から、知らないあいだに自然と難民問題について考えることが出来る空間が形成されているように思いました。

Refugioのプロジェクトの例 

難民一人ひとりのライフヒストリーや社会へのメッセージが

店内で読めるようになっている




まとめ


シェアハウスのオーガナイザーでベルリン工科大学の大学院生のソフィさんによると、まだまだドイツ国内においても、難民は「福祉制度に依存する脆弱な存在」というスティグマが強いそうです。このような偏見を軽減するためにもRefugioのような施設は、重要な役割を担っているのではないでしょうか。


Refugioでは、難民の人々が支援の対象ではなく、「ビジネスパートナー」であり「学びのパートナー」として受け入れられており、施設には新しい価値観やアイディアに敏感なベルリナー(ベルリン市民)が来店することが多いようです。創設時は支援することが目的だったかもしれませんが、様々な取り組みによって「支援」から「共同」へと、コミュニティが変化してきたのではないでしょうか。

書き手の紹介

「ラボラトリ文鳥」のコーディネーター。詳しくこちら 


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